~冬はのんびり・ゆったりと体力の貯金をする時~
「一面銀世界!」と冬を表現したいところですが、日本で銀世界に出会ったことは、28年という来日生活の中では、数えるほどしかありません。
私のふるさとである中国の黒竜江省では、一度降った雪は春まで解けず、冬はいつも真っ白な雪景色の中で過ごしていたものです。
黒竜江省は中国の東北地域に位置し、中国一寒いところですが、全国一お米が美味しい産地としても有名です。どうして他の地域よりもお米が美味しいかと言えば、秘密はこの寒さにあります。
冬は自然界では動物が冬眠状態に入り、万物が閉蔵する時季です。地上の植物も枝葉を落とし、枯れて生命がないように見えますが、実は自分の根っ子にエネルギーを蓄えているのです。
翌年の春に芽吹かせる為の力を自分の奥に蓄えるという自然の摂理が働いています。
寒ければ寒いほど、エネルギーは中へ奥へ下へと向かい、地下の土地も栄養が豊かになり、その栄養が翌年に充実した果実をもたらしてくれます。冬は地下が暖かいのも、この原理によります。黒竜江省で生活していた頃は、冬は地上の倉庫を天然の冷凍庫として使い、地下室は凍らせたくない漬物や野菜を貯蔵していたものです。
人間も自然の一部分なので、冬は身体にとっても栄養を蓄える時期です。夏に比べて、内臓が温まりやすく、消化機能が高まり、食べたものは、吸収しやすくなります。
内臓では腎が蓄る機能を担当し、この時季はその機能が盛んになりますが、一方でタメージを受けやすくもなります。
東洋医学では、腎は「作強の官」と呼ばれ、生命維持のための原気を作り、根気や忍耐力を形成すると言われ、生命力の貯金箱のような役目や生殖、成長、老化、寿命にもかかわるとても大事な臓器です。
生理機能その1【蔵精】
生命の活動を行う上で、必要なエネルギーである気血水を貯蔵する動きがあります。
その2【体液の管理】
身体の水分を仕分けし、要るものは肺に送り、要らないものは膀胱を通して外に出します。
その3【納気を主る】
肺と共同作業で呼吸を主りますが、深いところまで気を収めてくれるのが腎の役割です。
腎が元気な人は足腰が丈夫で、髪の毛が艶黒で、耳がふっくらしています。
生理面では忍耐力が強く、根気よく、持続力があります。
腎が弱ったら、足腰が軟弱、白髪、忘れっぽい、難聴、頻尿、疲れやすいなどの老化現象が現れてきます。
生命をいつまでも若々しく保ち、健康に長生きする為には腎の養生はとても大事になりますね。
冬の養生は腎の養生です。腎を守る為に生活面、食事面で気を配ってあげましょう!
<生活面>
① 夜はなるべく早く寝て、朝はゆっくり起きるようにして睡眠時間をなるべくながくとりましょう。
② 身体を冷やさないように暖かい服装で過ごしましょう。
③ お風呂は湯船につかり温まりましょう!しかし汗をかいてしまうと体力の消耗につながりますので、汗が出る手前でお風呂からあがるのがベストです。
④ 汗をかくような激しい運動は避けましょう。
⑤ 心穏やかにのんびり過ごしましょう!
<食事面>
① 冬は気血を補う食材を積極的に取りましょう。
② 胃腸に負担をかけすぎないように暴飲暴食は避けましょう。
③ なるべく暖かい温度で食べましょう。
④ 腎の働きを助ける黒い食材(黒豆・黒ゴマ、黒木耳など)も積極的に摂りましょう。
◆冬にとってほしいおすすめ食材◆
~補陰(潤いを補う)食材~
小松菜・アスパラガス・ゆり根・黒豆・リンゴ・牡蠣・アワビ・山芋
~補気(エネルギーを補う)食材~
人参、大豆、さつまいも、やまいも、栗、鶏肉
~補血(血液を補う)食材~
ほうれん草、にんじん、イカ、落花生、牛肉、羊肉、ウナギ、しじみ
~補陽(身体を温めるもの)食材~
羊肉、胡桃、海老、にら、なまこ、ネギ、しょうが
~理氣・消食(消化を助けるもの)食材~
らっきょう、白菜・玉ねぎ・大根・みかん、香菜、やまいも
万物が閉蔵するこの時季に、私たちも自然の摂理に従い、激しい体力の消耗は避け、栄養があるものを食べて、のんびり過ごして、ゆっくり寝て、心を穏やかにして、自分の中に体力を蓄えることを心がけましょう!春になったら自分らしい美しい花を咲かせる為に今がその準備期間です。
みんな暖かい幸せな冬を過ごしてください。
作者:尹玉