春といえば、桜の花さく季節。新学期と新年度の始まりの景色を彩ってくれる桜は日本らしさの象徴でもありますね。
新しく始まるということは、わくわく感もあって、行動力も高まりますが、環境の変化も意味します。
別れと出会いが同時に行われているこの時季に、実は大きいストレスを伴うことが多いのです。
木の芽時、五月病と言われる言葉には、この変化にうまく対応できず、心理的に何らかの問題を抱えていることを示唆しているのではないでしょうか?
風水歴では2月4日の立春から、新しい一年の始まりと見なしています。宇宙のエネルギーも新しく変わり、それまで、奥に下に向かっていた冬のエネルギーの方向性から、外側の四方八方に向けて「発散」活動が行われるのです。
自然界を見渡したら、万物が芽吹き始める春は地上の景色が色づいて、生き生きと栄え始め、動物も冬眠から目覚めて、活動するようになります。
人間も、同じくこの春のエネルギーに共鳴し、うきうき、わくわくする感情が芽生え、外に関心が向きやすく、より行動的になるのです。
私たちの臓器の内、この春の芽吹くエネルギーに対応しているのが「肝臓」。この時季は肝が盛んに動き出し、冬中に貯めこんだものを整理し、要らないものを外に出そうとする「解毒」機能が起動します。
肝の特性は、この春の伸び伸びする性質同様、条(じょう)達(たつ)を好み、抑鬱(よくうつ)を嫌うのです。
環境に適応できないストレスは、肝気の働きを滞らせ、イライラの興奮状態を招くか、その反対でうつ状態を招くこともあるのです。
黄帝内経(こうていだいけい)という中国最も古い医学本では、春の過ごし方は、万物が芽吹くのに合わせて人間も活動的であるべきとされ、抑制的な態度は相応しくないと教えています。
ゆるゆると散歩でもして、髪も解いて、衣服もゆったりとしたものを身にまとい、気持ちを伸びやかにさせるようにと書いています。
新陳代謝が行われる大切なこの時季、重要な役割を担う「肝」は、その機能が盛んになる反面疲れやすくもなるのです。
私たちはせめて「肝」の負担を増やさないように、労わってあげることが大事です。
東洋医学では、肝は魂を蔵している臓器と言われ、精神状態、決断力に関係し、意識の暗明も肝によって決まると言われています。全身に伸びやかに気を回し、各臓器の機能をサポートし、解毒機能を担うのです。
生理機能
① 疏泄(そせつ)―気を巡らせる
この作用によって、全身に氣血がのびやかに回すことができ、解毒、排泄が促されます。
② 蔵血―血を蓄える
血が十分蓄えられると、体力が充実し、精神も安定します。
血液量が十分ある人は爪が丈夫で、艶がよく、目の疲れも感じにくくなります
不足すると、爪がもろく、筋肉がつりやすく、目の疲れも感じやすくなります。
肝が元気な人は肌艶も良く、身体のさまざまな機能が伸びやかに行われやすいので、血液もさらさらに保ちやすくなります。やる気と元気も充実します。
生理面では伸び伸びと明るく、積極的に事を成すことができて、決断力もあるのです。
肝が弱ったら、目が疲れやすく、便秘や不眠症、血液が汚れやすい、アレルギー症などになりやすくなります。
身体の毒素を分解して、排泄を促してくれる大事な役割もあるので、病気の予防の為にも大切に扱いたいものです。
春の養生は肝の養生です。肝を守る為に生活面、食事面で気を配ってあげましょう!
<生活面>
① 気候の変化が大きい春のこの時期、急いで服を減らしたら、風邪が侵入しやすくなるので禁物。
② ストレスをためないように、自己調整していきましょう。
③ 目を使いすぎは肝血を消耗させるので、気をつけましょう。
④ 適切な運動をして、気をめぐらせしましょう。
⑤ 23時~3時までは肝胆の時間帯になるので、この時間帯はしっかり寝ることで肝胆の修復機能が高まります。
<食事面>
① 暴飲暴食は肝臓の負担を増やすので、避けましょう!
② 身体を冷やさないように、温める食材を積極的にとりましょう!
③ 酸味のある食材は、潤い効果があり、イライラを静めるので、肝熱がある方にはお勧めです。
一方、酸味は気の生長・発散を抑えるので、冷え性、鬱っぽい方はお控え目に。
④ 補血作用がある食材で、消化に負担かけない食材を積極的に摂りましょう!
⑤ 消化系統を補う甘味(穀物等)食材をとりましょう。
⑥ 解毒作用がある旬の野菜は便通などを改善します。旬の苦味食材は身体を冷やす傾向があるので、冷え性の方はお控え目に!
<肝に対応する食材の方向性>
〇平肝(イライラを鎮める)
セロリ 菊花 クレソン トマト ビーマン くらげ
〇理気(気の流れをよくする)
玉ねぎ カボス きんかん グレープフルーツ
みかん ジャスミン茶 白ワイン 柚子 香菜
ハーブ類の香が良い野菜
〇解表(発散、発汗、邪気を払う)
生姜 葱 豆鼓 紫蘇 香菜
〇解毒
蓮根 キュウイ 白菜 味噌 緑豆 菊花 しそ
生姜 みょうが もやし にんにく ふき いちじく
しじみ ブーアル茶
〇補肝血
にんじん イカ 葡萄 ほうれん草 あわび
黒豆 黒胡麻 牡蠣 なまこ ぶり うなぎ
まぐろ 牛肉 羊肉 鴨肉 卵
寒くもなく、暑くもないこの気持ち良い季節に「春眠暁覚えず」状態で良く寝て、軽く食べて、笑って、ゆるゆる、のんびりしていれば、肝もきっと喜んでくれるでしょう!
肝が喜んだら、すべてが伸びやかにうまくいくのです。